アスリート・トレーナー・管理栄養士からトレーニングを学ぶ
パリ五輪を目指す現役トップアスリート、JSPO公認アスレチックトレーナー、ローイング競技日本代表チームの管理栄養士が三者の視点からスポーツ選手の競技力向上に効果的な食事の摂り方、トレーニング方法、自重トレーニング実践体験の講習会が開催され、カヌー競技の高校生アスリートや保護者等が学んだ。
三条市、燕市、加茂市、田上町、弥彦村、見附市のスポーツ協会で構成する県央スポーツネットワーク(中條耕太郎会長)は、1月14日午後2時半から三条市体育文化会館マルチホールで講習会「アスリート・トレーナー・管理栄養士からトレーニングを学ぶ」を開催、分水高校・万代高校カヌー部の選手と保護者、接骨院・整骨院スタッフ、フィットネスジムのインストラクターなど40人程が参加した。特に高校生期には食事の摂り方に対する正しい知識も必要なため高校生の保護者にも参加を呼びかけた。
講師はパリオリンピック出場を目指すプロカヌーアスリートの當銘孝仁選手、新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科の管理栄養士の宮本真菜氏、アスレティックトレーナーの石倉孝樹氏の三人が務め、宮本氏のミニ講座、三者のパネルディスカッション、石倉氏の実践トレーニングを行った。
『主食』が足りていない? 「筋グリコーゲン」がものすごく重要
ローイング競技日本代表チームの管理栄養士としてトップアスリートを食事面から支える宮本氏のミニ講座では、日々の練習や大事な試合に良い状態で臨み最高のパフォーマンスを発揮するための「高校生のアスリートとして意識したい食事のポイント」として、食事の量、食事の質、タイミングを意識して、食事をトレーニングの一部として考えて欲しいと訴えた。
主食、主菜、副菜と汁物、果物、乳製品といったバランスの取れた食事が基本だが、高校生年代の今一番しっかり「量」を摂るべきものは『主食』。主食をしっかり食べるということが強くなる第一歩。バテやすい、集中力切れやすい、最後はヘトヘトになって思うように力が出せない、疲労が取れにくい、食べてるのに体重が全然増えない、逆に減ってしまうという選手が高校生の中にかなりいる。一つでも当てはまる人は必要な主食の量が摂れていないサインかもしれないと指摘。
アスリートにとっては筋肉の中の糖分「筋グリコーゲン」がものすごく重要で、筋肉中の筋グリコーゲンの量が多い人が長く運動を続けることができ、トレーニング強度を上げる事ができる。トレーニングが終わったら、毎食しっかり主食から糖質を摂取してトレーニングで使った筋グリコーゲンを補充するという良いサイクルを作っていくのが高校生の時期にすごく重要なこと。
60キロの選手は1食にご飯1合
では、どれくらいの量の主食を摂ればいいのか?
一番馴染みのある白いご飯なら、トレーニングのある日は体重60キロの選手であれば1食にご飯1合。70キロの選手は1.5合。80キロの選手は2合を食べる必要がある。おにぎりなら60キロの選手で1食に3個半、70キロの選手で5個、80キロの選手で6個半。これプラスおかずを食べないといけない。いきなりは無理でもしゃもじ半分ずつでもいいので、少しずつ食べ増やすということを「ぜひやってもらいたい」。
こんなに食べたら太ってしまうという人が、特に女子選手にいるが、今までの経験ではそれまで食べていたお菓子とかジュースとかがもう入らなくなり、結果、体脂肪がぐっと下がって体重が減るといった選手ものすごく多い。
高校生年代でプロテインは必要ですか?と聞かれることがあるが、プロテインは、食事がしっかり摂れていれば必要ないと思っている。たんぱく質は摂りすぎると脂肪になりやすく腎臓や肝臓に負担がかかってしまう。体作りの目的、トレーニング量にあった適切な量のたんぱく質を摂る事がすごく大事なポイント。たんぱく質は主菜、タンパク質源、魚、肉、卵、豆類、これらを毎食二品か三品組み合わせて食べていれば十分だと思う。
トレーニング後にトレーニングで使った筋グリコーゲンを素早く補充するために主食は抜かないで摂ってほしい。
「今一番必要なのは主食、お米の量をしっかり取るということ」と強調した。
パネルディスカッション
講師の當銘選手、宮本氏、石倉氏をパネリストに、三条市スポーツ協会事務局長の岩瀬晶伍氏が司会を務めて「トレーニングについて」のパネルディスカッションを行った。當銘選手は合宿中のスペインからオンラインで参加した。
高校時代にトレーニングや食事で重視していたことは?の問いかけに當銘選手は、食事は量を沢山摂る、トレーニングもたくさんやるのが正義!と考えていて「食事もトレーニングも量を追求していた。1.5合ぐらいは楽勝で食べていた」と話した。ジュニア、U23、A代表と各年代の日本代表を経験してきた當銘選手は現在のトレーニング量について「今は短い時間で。1時間以上になることはあまりない」。合宿中の食事は全部自分で作っていて、食事を作ることがストレスにならないように簡単なレシピを練習の合間に「あまり時間をかけずに作るっていうのも結構ポイント」と、写真を示しながら説明した。
新潟医療福祉大学の男子サッカー部、卓球部、開志国際高校スクールトレーナー等を務める石倉氏は練習時間について、昨年、夏の甲子園で優勝した慶應高校を例に挙げて「今言われてるのはケガのリスクとか考えて90分とか2時間ぐらい。集中して質を高くすることが必要」だとした。
自重トレーニングの実践体験
上肢・下肢の連動性を高める自重トレーニングを石倉氏が指導。参加者も実際に体験しながらそれぞれのエクササイズのポイントを確認した。関節をしっかり動かして可動性を上げるモビリティエクササイズ、安定性を上げるスタビリティエクササイズ、立位で行う筋活動をコントロールするためのストレングスエクササイズの中から家でも簡単にできるような13のメニューを紹介。スクワットでは「重心を意識して」背すじを伸ばす、足の真ん中に重心をおく、膝とつま先の向きを揃える、などのポイントを説明した。
[講師プロフィール]
■當銘孝仁選手(プロカヌーアスリート)
競技種目:カヌー/スプリント/カナディアンシングル・ペア
所属:アーネスト株式会社
東京2020オリンピック1000m出場
2023カヌースプリント世界選手権1000m出場
2023カヌースプリント日本選手権大会1000m優勝
■宮本真菜氏(管理栄養士)
所属:新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科
ローイング競技日本代表チーム管理栄養士
公益財団法人日本オリンピック委員会強化スタッフ
アルビレックスランニングクラブNutritionAdvisor
■石倉孝樹氏(アスレティックトレーナー)
所属:三条市体育文化会館
2011年新潟医療福祉大学健康スポーツ学科卒業
2016年JSPO-AT取得
講習会の様子
2024年1月14日(三条市体育文化会館)
管理栄養士宮本真菜氏のミニ講座
パネルディスカッション
自重トレーニングの実践体験
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