プロカヌーアスリートとして新潟県三条市を中心に活動するカヌースプリント日本代表・當銘孝仁選手(とうめたかのり・30)=アーネスト=は、6月に行ったスペイン合宿で手応えを掴み、パリ五輪出場枠獲得がかかる世界選手権大会(2023年8月23日~27日、ドイツ デュイスブルク)に臨む。
當銘選手は東京オリンピック後に、主に三条市の企業などから支援を受けて日本のカヌースプリント選手としてはほぼ初めてとなる「プロアスリート」として活動を始めた。新潟県内外のスポーツ振興・地域貢献活動にも取り組んでおり、6月下旬に三条市飯田小学校でカヌー体験教室を行うために帰条した當銘選手に“たいぶん”(三条市体育文化会館)で話を聞いた。
2年前の東京オリンピックを振り返って「当時から今くらいのことができていればよかった」との後悔がある。「海外の速い選手ともっと早いうちからできていれば」もっと違った結果になっただろう、とも感じている。
プロアスリートとして活動を始めて1年ほどが経つが、昨年は感染症の影響や実父の死去もあり「自分ではどうしようもないことに振り回されることが多かった」。次のオリンピックに向けてペアとシングル、どちらで目指すのか「決める年でもあった」。いろいろ試してみたがペアでは国内でも負けてしまい、シングル(C-1)1000mに集中することにした。
2023年5月のワールドカップ第1戦(ハンガリー セゲド)はC-1・1000mに出場するも予選8位での敗退。予選1着とは22秒6差の大敗に「やらかしちまった」という思いがあったが、そこにはオリンピック出場がかかる世界選手権大会(8月、ドイツ)にトップコンディションを持ってくるための戦略があった。
6月には20日間ほど、スペイン北西部にあるガリシア州ポンテベドラでのスペインチームの合宿に個人的に参加した。ポンテベドラはスペインナショナルチームの強化区域で合宿には世界チャンピオンも参加する。200m、500mが強いスペインチームとの練習は「スピード感もひしひしと伝わり、いい練習になる」と手応えを感じた。体格も日本人に近く、競いながら貪欲に技術を吸収した。
世界選手権に向けては7月末から3週間程、スペインで合宿を行いそのまま世界選手権が行われるドイツに移動する予定。世界選手権のA決勝で5位以内に入って五輪出場枠を獲得すればパリ五輪代表が内定する。
あと1年に迫ったパリオリンピックへは「プロは結果で示すのが一番。わかりやすく結果で示したい」と意気込みを語った。
[當銘孝仁選手プロフィール]
沖縄県糸満市出身。大正大学卒業の2015年から2022年3月まで三条市スポーツ協会(当時は三条市体育協会)に所属。沖縄水産高校時代に始めたカヌースプリント・カナディアン競技でインターハイ、インカレ優勝。ジュニア、U23、A代表と各年代の日本代表として活躍。世界選手権やワールドカップにも出場。リオオリンピックでは出場まであと一歩と迫った。東京オリンピックへは男子カナディアンペア(C-2)1000mでの出場を目指しシニア世界選手権大会やアジア選手権に挑んだ。特にアジア選手権ではトップと0.17秒の僅差まで迫るも、日本の出場枠獲得には至らなかった。その後、シングル(C-1)1000mの東京五輪代表選手選考会で優勝し、2021年8月、東京五輪に出場した。
2022年4月からアーネスト株式会社(新潟県三条市福島新田)に所属し、プロアスリートとしてパリ五輪出場を目指して活動をしている。
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