グッドコーチング研修「自立したプレーヤーを育てよう」
指示を待つことなく問題解決に向けて自ら考え、工夫する、自立した子ども(プレーヤー)を育成するためのコーチングスキルを学ぶ研修会が新潟県三条市で開催された。
一般社団法人三条市スポーツ協会(中條耕太郎会長)、三条市スポーツ少年団(芳竹良明本部長)主催のグッドコーチング研修「自立したプレーヤーを育てよう」が1月19日午前10時から三条市栄体育館多目的室で開催され、各競技団体やスポーツ少年団の指導者、保護者、関係者など60人ほどが参加して、プレーヤーの自律を支援するコーチングのポイントを学んだ。
講師はアイ・プラス株式会社代表取締役、心理カウンセラーの吉田繁敬(しげよし)氏。吉田氏は日本スポーツ協会公認ジュニアスポーツ指導員、日本パラスポーツ協会公認中級パラスポーツ指導員、剣道錬士七段で企業研修、地域子育て支援講座、大学でのキャリア支援講義などで実際に使える心理学の普及に努め、子供たちの心と体を育む楽しい運動遊びプログラムの普及に努めている。
吉田氏は、俺のやり方について来いっていう昭和の指導は「今は通用しない」。この練習をやったらこんないい事があるんだという「いいイメージ」を伝えることで、“なりたい”と思う自分を意識させ、効果的に動機づけ、自発的な行動(やる気)を引き出すことが“コーチング”だとした。
「自律」を引き出す「指導」
「自律」を引き出す「指導(ティーチング、コーチング)」をするためには“理由・目的”が必要で、いいからやれ!ではダメ。剣道の蹲踞(そんきょ)を例にあげ、その由来・理由を説明することで相手が納得して取り組むことができる。
ティーチングでは基本的には否定語は使わない。剣道で、左手が曲がっているから(竹刀が相手に)届かないんだ、と言われるとやる気がなくなるが、左手が伸びていたら絶対届いたぞ、と言われたらモチベーションが上がる。同じことを言っているが、選手の受け止めが違ってくる。
「コーチング」の基本的なスタイル
コーチングでは、相手の話を「傾聴」して「質問」をする、「承認」認めることが基本的なスタイル。
代表的な質問方法には、“はい”か“いいえ”、もしくは“A”か“B”を選択する「クローズド・クエスチョン」と、相手の考えや気持ちを引き出す「オープン・クエスチョン」があるが、この2つを上手に使う。
誤ったことをしてしまった子どもに対して母親が、なんでこんなことやったの?と聞いても、子供はこの場をどう切り抜けようかに頭がいっぱいで答えられるわけがない。
これはやっていいこと、ダメなこと?(母)、だめ(子)、そうでしょう、どうしてやったの?(母)と聞くと子供はだめなことを認めていて隠す必要がないから理由を話す。
友達がやっていたから自分もしてしまった子供が、自分がやらないだけでなく、誤ったことをしている友達にも“やめとこう”と言えるようになれば自律の幅が広がる。そこで、“友達だったら言ってあげなさい”という『指示』ではなく、友達だから言ってあげた方がいいな、と子供が自分で気づくまで階段を降りてヒントを与えて、子供から引き出す『自己決定』が大事。
コーチングでは相手に質問を投げかけて、相手の口からやるべきこと[自己決定された行動]を引っ張り出す。自分で決定したことだから自分でやろうとする気持ちも高まって、しかも自分で決めたことだから、やってよかったなって気持ちも大きくなる。
プレイヤーの自律を支援するポイント
指導者や保護者は、プレイヤーとの横の関係を築き、承認することで自己肯定感の高いプレイヤーに育てることが自律を支援するポイントだと説明。ありがとうと言われることで自己肯定感が高まり、自律につながる。実力を過大にも過小にも評価せずに客観的に認識することができる“メタ認知能力”を高めるためには「ソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)」がすごく効果的。SFAは、何が悪かったのか問題に焦点を当てるのではなく、「どうすれば解決するのか」に焦点を当てて、未来に向かって解決方法を探る方法。
指導者や親には、変えられない過去にこだわることなく、未来に向かって「次どうするんだ?」と問いかけ、解決方法を本人に言わせる、ソリューショントークが求められる。
[GW]子どもの自律のために親・指導者が提供できる環境は?
各テーブルごとにグループワークも行い、プレイヤー(子どもたち)自らが主体的に取り組めるような環境を提供するためには、親・指導者は何をすべきでしょうか?をテーマにブレーンストーミング。参加者からは「監督やコーチが入らない練習や試合をする日を設ける」、「否定的な声がけをしない」など、様々な意見が出され、活発に話し合いをして学びを深めた。
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