【アスリートフォーラム】中学校の部活動地域移行は? 地域スポーツはどうあるべきか?

アスリートフォーラム

新潟県三条市を拠点に活動するトップアスリート3人の経験などを聞きながら、部活動の地域移行やアスリートが思い描く未来の地域スポーツを考える「アスリートフォーラム」が9月22日に開催された。

(投稿/2024年10月7日)


「アスリートフォーラム」は県央スポーツネットワーク(中條耕太郎会長)が主催し9月22日、三条市体育文化会館マルチホールで開催された。カヌースプリントで東京2020五輪出場の當銘孝仁(とうめたかのり)選手(31)、オープンウォータースイミング(OWS)で2023年の世界水泳福岡大会出場の加藤はなの選手(25)、バレーボールで全日本大学選手権優勝の大口晶蘭(おおぐちあきら)選手(25)の3人をパネリストに迎え、小・中学生や高校生、保護者、スポーツ指導者や関係者70人ほどが参加した。

中條会長は「三人の選手がどうやってトップアスリートになったのか、どういうふうな道を歩んできたかなどを学びながら、地域スポーツについて考えていくいいキッカケになると思う。部活動の地域移行など子供たちのスポーツ環境の激変が始まっていて、複数の市町村が連携をしてスポーツ振興にあたっていくという大きな役割が求められている」と開会の挨拶。

一般社団法人三条市スポーツ協会の岩瀬晶伍常務理事が進行役をつとめて、部活動の経験、部活の地域移行、その課題、これからの地域スポーツ、スポーツハラスメントなどについて3人の経験などを聞きながら考えた。


競技をはじめるきっかけについて當銘選手は「高校の時、アルバイト先の先輩に誘われた」。中学入学時に身長168センチだった大口選手は「自分の体格を活かせるバレーボールを選んだ」、3歳から水泳を始めた加藤選手は「兄が(スイミングに)通っていたので」、競泳自由形をメインにしていたが担当コーチから長距離に向いているからこんな競技があるからやってみたら、と勧められ「高校2年生でOWSを始めた」。

加藤選手の部活経験は「水泳はスイミングスクールで続けてた子が選手コースに入って全国大会目指したりというのが基本的な形。練習はスクールで、中体連の大会には中学校部活の名前で出ていた」。大口選手は、中学の部活は初心者が集まっているチームで指導者も未経験者で「部活を楽しいと思ったことはあまりなかった」。

岩瀬さんが、部活の地域移行に伴う課題として“専門性が高い指導者の確保”をあげると當銘選手は「(カヌー)競技経験者が少ない上に、教員になる人も少ないので(部活の)指導者が少ない」と課題をあげた。「スクールでは3年前に地域移行の話が出てから選手コースとは別に「水泳部」ができた」(加藤選手)、「初めてやる競技だけどうまくなりたい思いはすごくあって、中学部活では自分で考えてやるしか方法がなくて、(中2・中3の選手が集まる地域クラブで)初めて専門の人に教えてもらったり、他の強い学校の人と一緒にやることで、向上していく自分を感じた」(大口選手)。

三条市中学校の部活動地域移行は令和5年度に柔道、軟式野球、陸上競技の3種目がスタートし、6年度はバレーボール、剣道、ソフトテニスの3種目、7年度にバスケットボール、サッカー、卓球の3種目が開始予定となっている。

岩瀬さんは「少子化で子供がスポーツに親しむ機会の確保が今後さらに難しくなっていく。子供たちがスポーツに親しむ機会を継続して確保していくため部活動の地域以降を進めます」と話す室伏広治スポーツ庁長官の動画を紹介して、部活動の地域移行は先生の働き方改革ではなく「ジュニアユース世代のスポーツ環境をより良くしていこう」という話しだと強調。中学3年時の部活引退後の競技中断期間にも触れた。

これからの地域スポーツはどうあるべきか?を問いかけると當銘選手は、離婚率が高くて一人親家庭が多い沖縄県のことを話し「スポーツに関わることは人材育成につながる。犯罪の道に進まないためにも」と述べ、加藤選手は「プールがない学校も増えてきている。プールと指導者を提供できる民間企業が増えて、地域と連携して小さい子でも興味がある子供たちが気軽に持続できるような環境になればいい」、大口選手は「指導者と合わなくて競技を続けない子供が結構いる。地域スポーツに移行していくことで、指導者の選択肢もできる(ことが望まれる)」などとした。


【當銘孝仁選手プロフィール】
カヌースプリント
所属/アーネスト株式会社
出身/沖縄県糸満市
成績/東京2020五輪出場
2024年度日本代表
【加藤はなの選手プロフィール】
オープンウォータースイミング
所属/青森県競技力向上対策本部/ダッシュスイミングスクール三条
出身/新潟県三条市
成績/世界水泳選手権2023福岡大会 女子10km 33位
OWSオーシャンズカップ2024 女子10km・8km 
【大口晶蘭選手プロフィール】
バレーボール
所属/(一社)三条市スポーツ協会
出身/新潟県十日町市
成績/2021年度全日本大学選手権大会優勝(東海大学女子バレーボール部)

アスリートフォーラムの様子

2024年9月22日(三条市体育文化会館マルチホール)


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