【パラリンピック】「宝剣作の舞」と、復活させた古式鍛冶技術のコラボレーションで採火

東京2020パラリンピック聖火リレー開催に向け、新潟県内全30市町村では独自かつ多彩な方法で採火を行っている。三条市では2021年8月16日午後1時から三条鍛冶道場(三条市元町)で採火式を行い、聖火を「新潟県集火・出立式」に送り出した。

東京2020パラリンピック聖火フェスティバル三条市は50人の観覧者を入れて開催した。開式にあたり滝沢亮三条市長は「三条市の採火式では三条神楽保存会からは200年の伝統がある演目の中から宝剣作の舞を、越後三条鍛冶集団からは三条のアイデンティティである物作りとコラボレーションした素晴らしい三条市ならではの採火式を行う。三条で採火した火がパラリンピックの選手達、TV等を通して見る世界中の人達に伝えられるのも嬉しい」と述べた。越後三条鍛冶集団の梅田効作会長(65)は「「宝剣作の舞」と三条鍛冶集団の火がパラリンピックの選手のパワーの源の一部となり、コロナ終息へ向けての一助となればと思っている」と挨拶をした。

200年以上前から三条の地で伝承されている伝統芸能「三条神楽」を保存・伝承する三条神楽保存会は、三条という言葉の由来でもある刀匠・三条小鍛冶宗近が天皇の命により、宝剣を作るにあたり、稲荷の大神の神助によって完成するという、三条では鍛冶舞とも呼ばれる、金物の町三条にふさわしい「宝剣作の舞」を舞った。

屋外特設ステージでの舞が終わると、三条鍛冶道場内の体験場に会場を移し、越後三条鍛冶集団による採火を行った。

数百年の歴史を持ち、国の伝統的工芸品にも指定されている越後三条打ち刃物を後世に伝承すべく三条鍛冶道場を拠点に伝統技術の継承と後継者の育成に力を注ぐ有志の「越後三条鍛冶集団」は、古式の鍛冶技術を復活させた採火式を行った。伝統工芸士の飯塚正行さんが細く尖った鉄の棒を金槌で「カン、カン、カン」と叩くと、冷たい鉄が700〜800度の熱を帯びてゆく。先端がオレンジ色になったらモグサに入れて種火を起こす。麻をのせて幾度か息を吹きかけると煙が立ち昇り、火花が見えて火が起きた。

滝沢市長が点火棒を近づけ採火。刈屋祐誠(かりやたくま・34・三条市・株式会社パール金属勤務)さんが持つ聖火ランタンにその火が移された。この火はこの後、刈屋さんが三条市代表で出席をする「新潟県集火・出立式」が行われる新潟ふれ愛プラザ(新潟市江南区亀田向陽)に運ばれ、県内各地から届いた聖火と共に一つのあかりとなる。

全国障害者スポーツ大会のフライングディスク、ボーリング種目に2年連続で新潟県代表として出場した狩屋さんは式典の後の取材に、「緊張した。楽しかった」と答えた。梅田会長は「「宝剣作の舞」を初めて見た、技術の伝承の難しさを感じた」と話し、鍛冶職人の技術にも通じることだとした。

県内30市町村で採火した火を、一つの炎に統合する「集火」。集火した火を「東京2020パラリンピック聖火(新潟県)」として開催都市東京へ送り出す「出立」式が8月16日午後4時から新潟ふれ愛プラザで開催された。8月20日、47都道府県の聖火を東京で一つに統合する「集火式」を実施。21日から24日、統合された一つの「東京2020パラリンピック聖火」により東京で聖火リレーを実施する。

三条市採火式の様子

2021年8月16日(三条鍛冶道場)

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