NO!スポハラ研修会『ジュニアスポーツ指導現場におけるパワーハラスメントについて』
NO!スポパラ研修会『ジュニアスポーツ指導現場におけるパワーハラスメントについて』が開催され、新潟県三条市の各種スポーツ団体、少年団、行政等の関係者50人ほどが参加して、パワハラをなくし、子どもを伸ばすスポーツ指導者の心得を学んだ。
研修会は一般社団法人三条市スポーツ協会(中條耕太郎会長)、三条市スポーツ少年団(芳竹良明本部長)主催、三条市、県央スポーツネットワークが共催でアイ・プラス株式会社代表取締役、心理カウンセラーの吉田繁敬氏を講師に迎え、3月9日午前10時から三条市栄体育館多目的室で開催された。
開会にあたり中條会長は「我々が子供のときには概念すらなかったスポハラ(スポーツ・ハラスメント)だが、これがいかに大事か、ということを学んでいただきたい」とあいさつ。
ジュニアスポーツ指導員、中級障害者スポーツ指導員、剣道錬士7段の吉田氏は地域子育て支援講座などで「楽しく、分かりやすく」をモットーに実際に使える心理学の普及に努める傍ら、子どもたちの心と体を育む楽しい運動遊びプログラムの普及に努めている。
吉田氏はスポーツ指導の現場におけるパワハラについて、ミスした相手に対して殴る蹴るとかの“身体的な攻撃”、「下手くそ」「お前のせいで負けた」などの言葉で精神的にダメージを与える“精神的な攻撃”、チーム内で無視をするなどの“人間関係からの切り離し”、ミスをした選手に過度な居残り練習やペナルティを課すなどの“過大な要求”、練習に参加させないなどの“過小な要求”などがあるとした。
愛媛県の済美高校が野球の試合で負けた時に監督が「お前たちが負けたのは能力がないからじゃない、努力をしなかったわけじゃない。向こうの努力が勝ちにつながったからだ。何を努力すれば何をやれば勝ちに繋がるかを示せなかった監督・コーチの責任でもある。みんなで共有し振り返って次に向けて何をやれば勝てるのか?そこを考えていこう」と部員に語りかけた例を話し、これが『成長的なマインドセット(心の持ち方)』だとした。
サッカーの試合中にチャンスでシュートを打たずにパスを出してしまった選手がいた。この選手がなぜパスを選択したのか。見ていてわからないなら指導をやめた方がいい。練習を見ている指導者が気付くべきだ。なんでパスなんだ?!と怒るのではなく「何が原因でパスになったんだ」の原因を考えることが必要で、その原因はシュートに自信がないから。そういう場面で自信を持ってシュートを蹴ることができるような練習メニューを指導者が考えればいい。
「(指導者)さっきのあの場面に戻れるんだったら“パスを出すか?シュートか?どっちだ?”。(選手)シュート。(指)なんでだ?。(選)シュートが外れても戻れるから。(指)そうだな、後半また同じ場面が来たらどうする?。(選)シュート蹴る。(指)わかった、頑張れ。」とサッカーの話を続けて、こっち(指導者)がやりたいこと(シュート)を『相手(選手)から引き出す』こと「これがコーチングです」と強調した。
「強い選手や勝つためのチーム作るためには多少の暴力が必要だ」とする指導者や保護者の誤った考えがまだある。大声で怒鳴る、暴言などの言葉の暴力は指導には必要がない、とバッサリ。
主役はプレイヤー。指導者の役割は、プレイヤーの活動のサポート役であること。選手本人たちが考えてプレイをする。そのサポートをするのが指導者だ、と指摘。
各競技団体が掲げている目的は“心身の健全な発達と人間形成”。少年団の目的も“スポーツで青少年の心と体を育てること”。練習であれ試合であれ、スポーツ活動は手段でしかなく、スポーツを手段にしてジュニア期の子供たちの心と体を育むことが目的。勝つことは大事だが心身の健全な育成ためにはハラスメントは必要ないということ。
「怒り」の感情をコントロールする
怒りをコントロール(アンガーマネジメント)するためには自分の気持ちを伝えることが大切。大事なのは感情を伝えることで、感情的に伝えることとは全く違う。パワハラがあったりとか、怒りをコントロールできないのは、理由をうまく説明できないとき。理由・目的を説明する進め方としてPREP法(プレップ法)が有効で、最初に自分の言いたいPoint(結論)を話し、Reason(理由)を述べる。Example(具体例)を挙げて、最後にもう一度Point(結論)を繰り返して締めくくる。
例えば野球で内角が上手く打てない場合、脇をしめて顎を引きましょうと結論を言う。なぜなら体をコンパクトに回転できるから。コンパクトに回転できたら差し込まれてもしっかり振り切れるから打てる可能性が高くなる。脇が開いたらその分、大きく振らなければいけないから球が捉えにくい。だから脇は締めましょう。と説明をする。
パワハラにならない指導を実行するには、プレーは叱っても人格は責めない、あとで必ずフォローする、他人と比較しない、長時間叱らないの4つのポイントを説明した。
『失敗する権利』
ジュニア期のスポーツ指導には「楽しい」「面白い」をいかに提供できるか?が必要で、適切な指導をするために「子どもたちには『失敗する権利』」を認めて、指導者には常に『スキルアップ』が求められるとした。
講演後、質疑応答を行い午後0時半頃に閉会した。
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